無農薬野菜とか有機栽培とかよく耳にしますが
「実際のところどんな風にして作られているのだろう?」と疑問に思います。
そこで、実際の農家の方にご協力頂いて、この一年間を通して具体的に
無農薬のお米ができるまでをとことん取材してみたいと思います。
おいしいお米のできるまで。第一回
無農薬野菜とか有機栽培とかよく耳にしますが、
「実際のところどんな風にして作られているのだろう?」と疑問に思います。
そこで、実際の農家の方にご協力頂いて
この一年間を通して具体的に無農薬のお米ができるまでを
とことん取材してみたいと思います。
今年一年かけて定点観測する田圃。
良質な野菜やお米は、いったいどのように作られているのか。
また、作り手である農家の苦労は、どのようなものなのか。知りたいけれど、消費者と農家との接点があまりないのが現状です。
そこで良質なものを栽培している農家の方々にご登場頂いて実際の現場からのレポートをお送りします。
無農薬栽培の取材を快く引き受けてくださったのは、熊本県玉名郡にお住まいの上田岩雄さん。
そして無農薬野菜を一緒に研究して栽培している坂井さんと青木さん。
無農薬栽培の苦労話や良かったことなどを春夏秋冬と季節毎にご紹介します。
まずその前に、基本的な学習から。
一言に有機栽培といいますが、有機栽培とは、「3年間化学的に合成された肥料や農薬をいっさい入れずに、堆肥などによる土壌作りから行った畑や田んぼから採れる野菜のことで、「有機JAS認定」を受けたもの」をいいます。
無農薬栽培とは、「栽培期間中に農薬を使わずに栽培された農作物のこと」です。
また、減農薬栽培とは、「従来の農業で使用する農薬量を5割以上減らして栽培されたもの」をいいます。
無農薬栽培のお米を作っている上田さんは、長い時間をかけて研究と改良を繰り返しました。
「本来持っている土の力を十分に発揮させ、作物も本来持っているパワーを十二分に引き出してあげることが、美味しいお米ができる秘訣です。」と熱く語る上田さん。
次号から詳しく現場からの報告をします。
左)上田さんが栽培している大葉。栄養満点の大葉は、ミネラルをいっぱい含んでいます。今、このお三方は、ミネラル栽培という新しい農法に取り組んでいます。
右)坂井さんのみずみずしい茄子。このままかじって食べても茄子特有のえぐみもなく、サラダのように美味しいです。
右)右が上田さん(自慢の大葉菜園で)。左は、パセリを栽培している青木淳さん。左)ハウス栽培で茄子を栽培している坂井年博さん。 |
おいしいお米のできるまで。第二回
さぁ、春です。そろそろ山にも野原にも様々な芽が息吹いてきました。
無農薬栽培をする田んぼでも少しだけ手を加える次期です。
一言に無農薬のお米といっても、様々な工夫がなされていますので、
今回は、その一部をご紹介します。
竹工場から頂いてきた竹の粉は自然の肥料になり、ただ廃棄していた物が美味しいお米の肥料に生まれ変わります。竹の粉を使うと、甘くて美味しく育つそうです。
3月、ようやく春の兆しが取材地九州にもやってきたような暖かな日より。
本格的な春にはほど遠いこの時期では、田んぼでの作業はあまりありません。
作業するのは、「すき込み」といわれる田んぼの土を耕運機を使って混ぜることをやります。
普通の無農薬でない田んぼの場合は、深さ15センチ以上の田んぼの土を掘り返します。
しかし、上田さん達が取り組んでいる無農薬栽培の田んぼでは、たったの5センチしかすき込みをやりません。実は、この「たった5センチのすき込み」が無農薬のお米を作る最大の秘訣らしいです。
上田さん「普通の田んぼの場合、深くすき込みをやっています。
そうすると去年できた稲の株を掘り起こしてしまいます。
去年の株が地中で腐ってしまい、せっかく出来た良い土壌が壊れてしまい、多くの微生物がいなくなってしまいます。自然と栄養が無くなり追肥や農薬といったものを使わなければならなくなるのです。」
上田さん達が取り組んでいる無農薬栽培の田んぼは、普通の田んぼに比べて土壌が硬い。
「これでは根が張れるのだろうか?」と疑問に思いますが、上田さんに言わせると「微生物がいっぱいいる硬い土の方が、稲自体が懸命に自立して根を生やすので、他の稲に比べてしっかりと生え、病気にも強く丈夫な稲に育ちます。」という答え。
左)大葉の土壌にも竹の粉を使って、味の方も「旨い」と好評です。
中上)竹の粉。
中下)硬くてしっかりした上田さんの田んぼ。自然が本来持っている力を最大限に引き出します。
右)今年は、この田んぼで餅米も作ります。今年の秋が楽しみです。
耕運機で深さ5センチをすき込みます。 |
おいしいお米のできるまで。第三回
季節の移り変わりは、気にとめていないと瞬く間に過ぎていきます。
無農薬栽培をしているお米も収穫の時期から逆算して作られています。
春のこの時期は、忙しい期間。
種植えから田植えまでが一月ちょっと。またたく間に日々は過ぎていきます。
固めの土にこしらえた田んぼに多めの稲を田植機で綺麗に植えていきます。
若葉の黄緑色も落ち着いてきた晩春の頃に、種植えが始まります。
去年出来た籾を大切に保存しておき、春の種植えの時期に外に出します。
寝かせておいた籾を5日ほど水に浸し、充分に水分を吸わせたら種蒔きです。
ほとんどの田植えは、田植機を使って植えていくので専用のプレートを使います。
このプレートに土と種を混ぜ合わせたものを手動の機械でまんべんなく蒔いていきます。
これが種蒔き作業です。
籾から稲に成長するのにだいたい35日かかります。
お日様の光を浴びてグングンと伸びて、立派な稲に育ちました。
取材先の南国熊本は、ムシムシとした梅雨独特の陽気に変わりました。
お伺いした日の前日は、気象観測史上初めてという雨量を記録。田んぼに張った水も多少水量が多いです。農業は、収穫の時期から逆算して育てていきますので、丁度この時期がベストの田植えの時、水量を巧みに調節していざ田植えの始まりです。
無農薬のお米栽培は、農薬を使用する田んぼと違い多めの稲を植えます。
一切農薬を撒かず、お米自らの力で育てるだけあって沢山の稲を植えます。
その中から強くて元気な稲だけが残り育っていきます。
他の田んぼより固めの土に植えられて、自らの力だけで育っていくので抵抗力も強く、農薬に守られて育つ稲よりも免疫力が高くなるそうです。
田植えが終わるといよいよ夏本番がやってきます。
左)ご夫婦で無駄なく田植え作業をこなしていきます。
専業農家は、夫婦共々協力し合って労働します。自然と夫婦仲も良いはずです。
中上)撒かれた籾。
中下)しっかりと根を張った稲は丈夫です。
右)無農薬であり、天然の元気な稲はしっかりと自立して美味しいお米になるのを待っているようです。
ハウス栽培横で育っていく稲たち。 |
おいしいお米のできるまで。第四回
夏は、緑いっぱいの季節。虫や動物たちが、元気に動き回ります。
植物も生き物たちも活発に生きているこの時期、
無農薬の田んぼでは、他では見られない珍しい生き物たちが
所狭しとうごめいています。
自然を愛する心が、無農薬栽培にとって肝心なのかも知れません。
無農薬栽培を手がける上田さん親子。農家は家族全員がスタッフです。
「暑い、暑い」と言ってたら、秋がそこまでやって来ました。
夏の間は、無農薬の田んぼでやることは基本的にありません。
それは「何故なのか?」を今回は説明します。
一般的な田んぼでは、田植えの時期に除草剤を撒き、稲が成長するたびに殺虫剤などを散布します。
こういった薬品を散布することで稲は、虫が付かず雑草も無い中で育っていきます。
が、無農薬の田んぼでは一切薬品は使いません。
下の写真を見て頂くと分かるのですが、薬品を散布した田んぼでは虫やタニシなどはいません。
かわりに無農薬の田んぼでは多くのタニシを始め、生きる化石といわれる[カブトエビ]などが所狭しと生息しています。アメンボやタニシなどの生き物にとっては楽園です。
実は、生き物たちの楽園が無農薬栽培にとって一番の要になっていました。
一般の田んぼと比べて一見みすぼらしく見える無農薬の田んぼですが、稲たちが頑張って大きくなるにつれて自立していくと、その後に生えてくる雑草をタニシなどが食べてくれるのです。
今まで害虫だと思われていた生き物たちが、今度は田んぼを活かしてくれる生き物になるのです。
田んぼにいる生き物たちを上手く操作して、稲を育てていくのが最先端の無農薬栽培といえます。
夏、農家では様々な夏野菜たちが育ってきました。
これから実りの時期を迎え、少しずつ忙しい季節がやって来ます。
左上)生き物の楽園。無農薬の田んぼ。
左下)生きる化石[カブトエビ]。薬品のあるところでは、生息できない貴重な生き物です。一年のうち一月ほどしか生息できません。
左中・上)虫一匹もいない一般の田んぼは、よけいに不気味にみえました。
左中・下)アメンボやタニシがたくさん。
右中・上)サラダカボチャの花。
右中・下)サラダカボチャの様子。
右上)オクラの花
右上)珍しい食べられるホオズキ。別名オレンジチェリー。
生で食べられるオクラです。 もいでそのまま食べても美味でした。 |
おいしいお米のできるまで。第五回
いよいよ収穫の秋がやって来ました。
冬から始まったこの取材のクライマックスです。
一年間大切に育てたお米が、たくさん実ってくれました。
栄養がいっぱいの稲は、頭を垂れて今まさに収穫を待っています。
自然の豊かさを実感できる有り難い光景です。
サギも自然の豊かさと優しさを知っているようで、全く逃げずにいて、収穫した後の虫たちを食べに来ています。
今年は、例年に比べて雨が多く災害にも多く見舞われ、自然を相手にする専業農家にとっては、落ち着かない時期も多かったと思います。
しかし、そこは大自然の営みでちゃんと測ったように収穫の秋は、この九州にもやって来ました。
お米作りは、冬に田んぼを鋤いて、春に籾を撒き、苗を育てて、田植えしてお米が育つのをじっと待ち、夏に花が咲いて、秋に実をつけるという当たり前の過程です。
しかし、専業農家の上田さんが作るお米には一切の農薬は使われておりません。
全てが自然を利用し、自然環境を活かした農法でお米作りをしています。
私達は、農薬を使うことを直ぐに思い浮かべますが、彼の農法は、手品を観ているような錯覚になるほど素晴らしいものでした。
時には、水を与えて水根を活かし、時には水を抜いて土根を活かして丈夫な稲に育たせ、タニシやカブトエビなどの水生生物を使って雑草を駆除するという離れ業を見せてくれました。
上田さんからは、大自然の動きを捉えて機知に富んだ農法を見せていただきました。
収穫されたお米は、自然そのものの「めぐみ」といっても過言ではないでしょう。
左上)収穫されたお米たち。
左中)タニシも役目を終えてまた、来年です。自然の恵みに感謝。
左下)収穫を終えた田んぼ。
真ん中)頭を垂れるお米。
右上)実り豊かに育った無農薬の稲。しっかりとしたお米に育ちました。
右下)水の調節などで、大きな雑草は、全くありません。これが、自然の働きを利用した最先端の無農薬農法です。
上田さんの稲刈りの様子です♪
仲の良さそうな上田さん親子。 |
おいしいお米のできるまで。最終回
穫した餅米で、
餅つき大会を開催しました!!
楽しくお餅をつくみなさん。
一年というのは早いもので、私達が取材にお伺いしてから既に一年が経ちました。
この間に東日本大震災や原発事故が発生して、ますます「食の安全性や信頼」が問われ、人々の健康面が不安視されています。
本来私達人間が持っている免疫力を高めれば、もっと健康にもっとハツラツと人間らしく生きられることをこの一年で学んだような気がします。
一年を締めくくり、新しい年を迎えようと自然の恵みとミネラルで育った餅米で上田さんたち仲間が集って餅つき大会を開きました。震災の影響で都会から移り住んできた家族や健康問題などに取り組む人達が、それぞれの思いを込めて収穫の一年を味わいました。